2020年3月16日
ここ数年、所得税は増税傾向ですが、法人税はアベノミクスにより下がりました。
役員報酬が高額な方は、一度、両方の税率をチェックして今後の方針を練り直してみてもよいでしょう。
なお、消費税増税の際に、地方法人課税の偏在是正のため、県や市へ支払う地方税が5.9%下がり、法人税と共に納付する国税の法人地方税が5.9%上がりました。
そう聞くと全く変化がないように聞こえますが、実質はどうなのでしょう?
「現在の法人税率はいくらですか?」
「今、実効税率は何%?」
と、ご質問を受けることも多いのですが、その会社の業態や所得によって、ずいぶん変わるので調べてみました。
法人の税金は、ご存知のとおり「法人税」と呼ばれます。
でも、この法人税(専門家は「法人税等」と”等”を付けます)って何を指しているのでしょうか?
その内訳は、
法 人 税(国税)
法人地方税(国税)
法人事業税(県税)
法人県民税(県税)
法人市民税(市税)
で、一般的に、国のみでなく各地方公共団体の地方税も合わせたものを総称します。
個人は、国税(所得税)を毎年3月15日に申告し納付するのですが、その後、住民税・事業税・・・とバラバラに納税通知書が届き、全体が見えずらいものです。
しかし法人は決算で合計額を計算し、上記の5種類税額を同時期に納付しますので、総額が分かる反面、税負担を感じてしまいがちです。
(納税額が多い法人は「予定納税」など、年に数回分けて納付します)
まず、法人税については、一般的な法人(普通法人)と協同組合・公益法人などの特殊法人に分けて税率か定められています。
今回は、圧倒的に多い普通法人について見ていきます。
次の判定基準は「資本金」です。
上記5つのうち、法人地方税以外は資本金の金額により税率が変わります。
法人市民税は従業員数も法人税額に影響があります。
所得税ほど累進性はありませんが、やはり法人税も所得の大小で異なる税率が適用されます。
特に今回の改正は、所得金額の大きい中小企業について増税があったと言えます。
法人税は、①法人の種類・②資本金額・④所得金額により、税率が変わります。
普通法人について見てみると、「②資本金額」による区分は長い間、以下の2つでした。
資本金が1億円以下の法人(中小企業) ⇒ 15%(ここが変わります!!)
資本金が1憶円超の法人(大企業) ⇒ 23.2%
しかし、今年(2020年)の3月決算より、
中小企業の税率が、「業績の良い企業」と「そうでない企業」とで分かれます。
具体的には、過去3年間の所得金額の平均額が15憶円を超える法人(適用除外事業者)は、税率が上がってしまいます!!
15% ⇒ 19%
※一定の協同組合等や特定の医療法人が連結親法人である法人など、別途規定がございます。
普通法人でない法人の方、その他詳しい税率を知りたい方は、国税庁のホームページをご覧ください。
所得金額 × 税率
全国一律で、会社の種類や資本金など全く関係しません。
ただし、税率は消費増税時にアップしました。
今年(2020年)の9月決算法人から税率が変更されます。
4.4% ⇒ 10.3%
法人地方税についての詳しい税率は、国税庁のホームページをご確認ください。
法人税額 × 税率
ここからは地方税ですが、この地方税は地方公共団体によって税率が異なります。
サンプルとして、福岡県を見てみましょう。
①法人の種類・②資本金・③所得金額が税率に影響します。
ここでも普通法人を見てみましょう。
地方法人税の改正と同じタイミングで、事業税は増税されていますね。
福岡県庁ホームページより
事業税の計算は「外形標準課税」などもあり、以外と複雑です。
詳しく知りたい方は、是非、ご自分の県のホームページをチェックしてみて下さい。
なお、福岡県事業税の詳細は、福岡県庁ホームページを参照ください。
所得金額 × 税率
県民税も同じく、福岡県を見てみましょう。
県民税は、「均等割」+「法人税割」の2つに分けて計算します。
公共料金の「基本料」のようなもので、たとえ赤字であっても一定の金額を支払わなければなりません。
なお、均等割は②資本金額によって金額が異なります。
福岡県庁ホームページより
一律で課税されます。
法人地方税の改正に伴い税率が下がります。
3.2% ⇒ 1.0%
ただし、年間の法人税額が年1,000万円を超える法人については、「超過課税」というプラスαの税率が上乗せされてしまいます。
法人税1,000万円・・・対象となる法人は結構ありますよね・・・
4% ⇒ 1.8%
福岡県法人県民税に関する詳細は、福岡県庁のホームページを参照ください。
均等割額 + 法人税額 × 税率
最後に、福岡市民税を確認します。
法人市民税についても、他の税金より種類は少ないのですが、①法人の種類でまず分かれます。
また、市民税も県民税と同じく、「均等割」+「法人税割」の2つに分けて計算します。
均等割を支払うべき法人に該当すると、下の表のように、
②資本金の区分
③従業員数
を見て、どの区分に入るかにより均等割額が決定します。
福岡市のホームページより
法人税割額の税率は一律です。
やはり地方法人税の改正タイミングで税率が変わり、安くなります。
11.3% ⇒ 7.6%
均等割額 + 法人税額 × 税率
福岡市民税の詳細は、福岡市のホームページをご覧ください。
どのくらいの所得になると、税率が何%になるのか分けてみました。
組み合わせにより何通りにもなってしまうため、資本金1,000万円の中小企業に限定して作った税率ボックスを見てみましょう。
今年(令和2年)の9月決算からは、新しい税率で計算します。
左端の所得金額の区分ごとに右端の税率合計を見ていただくと、どのくらい法人税がかかるか分かります。
()カッコ書きの税率は、適用除外事業者に該当した場合の税率です。
法人県民税については、上記でもふれた通り、法人税額が1,000万円を超えると税額が高くなります。
以外とこの区分に入ってしまうお客様も多く・・・
当所でも数件いらっしゃいます。
そのため、参考に法人税額が1,000万円を超えた場合の税率を記載しました。
法人県民税の税率が、1%⇒1.8%となります。
所得区分 | 通常の税率 | 適用除外事業者の税率 |
400万円以下 | 21.455% | 26.243% |
400万円超~800万円以下 | 23.255% | 28.043% |
800万円超 | 34.7704% | 34.7704% |
適用除外事業者に該当すると、軽減税率(800万円以下部分)が5%くらい上がってしまいますね。
所得が15憶円超の会社なので、ワーワー言う金額ではないでしょうが・・・
まだ、この区分の税率が適用される決算は残っていますね。
今年(令和2年)の8月決算までは、こちらの税率が適用されます。
ここでも参考に法人税額が1,000万円を超えた場合の税率を記載いたします。
法人県民税の税率が、3.2%⇒4%となります。
全体的に大きな変化はないようですが、少しだけ9月決算から上がりますね。
所得区分 | 通常の税率 | 適用除外事業者の税率 |
400万円以下 | 21.355% | 26.143% |
400万円超~800万円以下 | 23.055% | 27.843% |
800万円超 | 34.4704% | 34.4704% |
税率がたくさん出てきて訳分からなくなりそうです・・・
しっかり、ご自分の会社の位置を確かめながら税率を確認しましょう!
最後に・・・
少々増税になる会社もありますが、
それでも、法人税率は地方税と合わせて、高い部分の税率でも35%を切ります。
では、所得税は・・・
国税庁ホームページより
所得が4,000万円を超えると45%です。
それも所得税のみで・・・
住民税10%をプラスすると55%、半分以上、税金でなくなります!!!
役員報酬の改定時期に、どうぞ参考にされてみて下さい。